殺人鬼と宇宙人とうさぎ。

デス・コレクターズ(2006/ジャック・カーリイ著)

デス・コレクターズ (文春文庫)
デス・コレクターズ (文春文庫)
mobileデス・コレクターズ (文春文庫)

死体は蝋燭と花で装飾されていた。事件を追う異常犯罪専従の刑事カーソンは、30年前に死んだ大量殺人犯の絵画が鍵だと知る。病的な絵画の断片を送りつけられた者たちが次々に殺され、失踪していたのだ。殺人鬼ゆかりの品を集めるコレクターの世界に潜入、複雑怪奇な事件の全容に迫ってゆくカーソン。彼を襲う衝撃の真相とは?


ふらりと立ち寄った本屋でまずタイトルが気になって、それからビビッドな表紙に脳を射抜かれて予備知識もなにも無しにレジにダッシュした本。
あとあと調べてみればシリーズの二作目とのこと。
一作目は「百番目の男 (文春文庫)mobile)」。
が、読むのには特に差し支えありませんでしたので、お好きな方からゲットしていただいてよろしいかと。

閑話休題。思わぬ出会いを果たした本書ですが、これが意外な大当たり!
主人公はカーソン・ライダーという名前の30代男性。本書はカーソンの一人称で進み、人物紹介では“僕”となっています。
アラバマ州モビール市警察本部のPSIT〈精神病理・社会病理捜査班〉に所属する刑事であるカーソンはたくさんの傷を抱えています。
主に子供時代に帰依する傷。連続殺人犯である兄の事、その兄に殺された父親の事、亡くなった母親の事、そして最近では、別れた恋人の事など。

だから、と結びつけてしまっていいのはわかりませんが、カーソンには妙に子供じみたところがあります。
感受性が豊かで優しいキャラクターは女性受けはよさそう(私も好き)だけど、男性はイライラする人もあるかも。

そんな彼の相棒はハリー・ノーチラスという大柄な黒人男性で、カーソンよりも少し先輩。車の運転がダイナミックなご様子。
時折のぞかせる哲学者的な人生観が魅力的なひとです。
カーソンに足りない部分をうまく補いつつ、それでいて主張しすぎないあたりバランス感覚のいいキャラクターだと思う。

いきなりキャラクターの話から入ってしまいましたが、この著者は主人公の内側に読者を招き入れるのがうまい。
気がついたら完全にカーソンに感情移入して、いや、それどころか彼になりきって事件を追ってたくらい!
カーソンが何かを感じるたびに、うちひしがれるたびに、そして胸を高鳴らせるたびにこちらの感情までもが揺さぶられ、引っ張られる。
カーソンが感じたその通りにほかの人物たちを感じ、物事を感じる(これ、一人称小説として大成功ですよね)。

変化が顕著だったのはディーディー・ダンベリー。
テレビリポーターの彼女はとにかく図々しいし、最初はなんてカンに障る女なんだろうと憎々しかった。
だけど彼女とカーソンの関わりかたが変わって来るに連れ、そしてカーソンの気持ちが揺れ動くにつれて、彼女の何もかもが変わって見えて…不思議。

翻訳にこれといった癖はなく、この点で好みが別れることはなさそう。
キレのある比喩表現が楽しいです。
嘘をつくなという意味合いを「フィクション製造機のスイッチは切りましょう」と表現するとこなんかたまらんわー。
どの程度捜査に進歩があったのかはっきりしないが、少なくとも埃のなかに頭を突っ込んで天文学を習い、星はいつ現れるのかと尋ねている気分ではなくなった。
これも好き。こんな面白い表現、頭のどこを引っ掻き回したら出てくるのか不思議でならない。

プロットもよく練られています。
小さな謎をあちらこちらにちりばめることで本筋について考えさせない=答えを先読みさせないようになってる。
悩ませはするけどじっくり推理する間を与えないあたりが巧いです。
まるで謎のひとつひとつが主を護る有刺鉄線のように鋭く複雑に絡み合って、それでいて何一つとして余分なものはなく、最後にはすべての糸がひとつところに収束してくれるのが気持ちいい!

メインモチーフの『不気味な絵画』については最後に本当に意外!な真実が用意されていて、これが一番のどんでん返しだったかもしれません。

本書は手に汗握るサイコサスペンスであり、複雑に絡み合った謎解きミステリでもある。
ジェットコースターのようなめちゃくちゃなスピード感こそないものの、読者の心臓を掌握し、徐々に心拍数を高めていくドライビングテクニックは見事としか言いようがない。
この乗り物からは途中で振り落とされる危険はありません。どなたさまもご安心のうえお楽しみください。

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